インクルーシブデザインの実践プロジェクトでは、福祉分野と他分野が協働する3つのチームが、約1年をかけて実際に製品やサービスをつくりあげていきます。記事でも各チームの取り組みを追っていこうと思います。
今回は「ノリノリ’S」チームの活動の様子をレポートします。
※チーム名の由来が気になるところですが、そちらは9月2日の公開セミナーで発表があります。セミナーのレポート記事でご報告します!
テーマ
音楽を活用した“楽しい”介護予防活動
メンバー
介護予防事業を行う長浜市社会福祉協議会スタッフ
楽器販売や音楽スクール運営をする「イケダ光音堂」
長浜市社会福祉協議会では、高齢者が住み慣れた地域でいつまでも安心して生活できるように、介護予防や生活支援の取り組みを支援しています。しかし、ここ数年のコロナ禍では、高齢者が集まって活動することがなかなかできず、「フレイル(加齢によって体力や気力、認知機能が低下してしまう状態)」や要介護状態、認知症高齢者の増加が課題となっていました。
やっと高齢者のサロン(*1)活動が再開できるようになってきましたが、参加者もスタッフも高齢化が進み、以前のような活動に戻すことが難しく、解散するサロンも増えてきました。
スタッフの負担が少なく無理なく活動が継続できて、参加者ももっと楽しく取り組めるフレイル予防を取り入れることで、サロンを応援したい!そんな社協の思いをきっかけに、「音楽」をキーワードにした体操づくりが始まりました。
*1 サロン・・・小地域(自治会)単位で定期的に、みんなで集まり おしゃべりなどをとおして、交流する場をサロンといいます。長浜市では現在286箇所のサロンが活動しています。
「琵琶湖周航の歌」に合わせて体操!
7月、市内3か所のまちづくりセンターで、ノリノリ’Sがつくった新しい「リズム体操」のお披露目がされていました。軽快な音楽に合わせて体操をしているのは、長浜市内で高齢者の地域サロン運営に携わる方たちです。
お馴染みの「琵琶湖周航の歌」に合わせて、ノリノリ’Sのお手本を真似しながら、腕を上げたり、肩を上げたり。大きく足踏みをしながら動くので、体が温まります。終わるころには、足踏みでスタート位置からずいぶん前に動いている人もいて、会場からは笑い声が。
2曲目の「歓喜の歌」ではさらにテンポアップ。自分の頭や肩、お尻などを軽く叩く動作がたくさん入り、スピードも速いので、息があがる方もいます。ノリノリ’Sの一人で、今回の体操の振り付けを考えたインストラクターの中川亜紀さんは「間違えてもOKですからね!トレーニングですから。自分の体を叩いて体の細胞を起こしてあげましょう」と呼びかけます。
他にも脳の活性化になるリズムエクササイズなどにも取り組み、クールダウンをして終了になりました。最後は音楽に合わせて自然と体を揺らす人や、一生懸命に動きながら笑顔がこぼれる人も。
参加した女性は「楽しかった!好きな音楽に合わせて動くと、いつもより体が動く感じがしました。いつの間にか必死やったね」と話してくれました。
ノリノリで、もう少しだけ手を伸ばそう
ノリノリ’Sのもう一人、長浜市社会福祉協議会の内貴紀香さんは「みなさんが知っている曲を使うことで、『思ったよりも、もう少しだけ手が伸びる』。そんな体操を目指しました」。狙いはばっちり成功したようです。
体操の動きは、音楽にのせたエクササイズ「ヤマハウェルネスプログラム」を参考に、インストラクターの中川さんがさらに動きやすく改良して、振り付けしました。年代を問わずに無理なく、楽しく動ける内容になっています。
ヤマハ音楽教室の鍵盤楽器の先生でもある中川さん。なんと今回の体操に使った曲たちは、すべて中川さんがエレクトーンを使って演奏して録音したもの。聴いているだけでも楽しくなるような、素敵な音楽です。
7月には「上を向いて歩こう」に合わせた体操も含めて、3曲分のリズム体操動画をノリノリ’Sのお二人で撮影したそう。ストレッチやクールダウンの体操も合わせてDVDにまとめて、地域の各サロンに配布していく計画だそうです。
長浜のあちこちで「ノリノリ」で体を動かす高齢の方たちの姿が見られる日も近そうです。
次回のレポートもお楽しみに!
文・船崎 桜