インクルーシブデザインの実践プロジェクトでは、福祉分野と他分野が協働する3つのチームが、約1年をかけて実際に製品やサービスをつくりあげていきます。
今回は「suinner(スイナー)」チームの2回目の活動レポートです!
チーム名
suinner (スイナー)
テーマ
インクルーシブデザインの視点でつくる商品開発
メンバー
マルチスイッチ (車椅子ユーザーのための衣類の開発・販売)
✖️
ワタナベユカリ(服飾デザイナー)
荒井 恵梨子(商品開発・企画専門)
suinnerチームは車椅子ユーザーのためのジャケットを開発中。「見せたくなる、出かけたくなる、楽しくなる衣服」「魅せる、出逢う、活きる、粋な服」をキャッチコピーにしています。
マルチスイッチ代表で自身も車椅子ユーザーである木村寛子さんからの経験談を元にアイデアを出し合って、2024年1月、ついに試作品第一号が完成しました。
フォーマルシーンにぴったりなジャケットを試作
ツヤっとした光沢のある生地で丈が短めになっているジャケットは、車椅子に座った状態でもシワがよらず、フォーマルな場面でカチッとかっこよく決まりそうです。腕を前に伸ばしたままスムーズに着脱ができるよう、背中側はエプロンのように全て開くようになっています。後ろ姿でスリットが見えるのもおしゃれ。
このデザインをベースにして、受注生産でいい素材を使い、少々高くても「一生もの」と言えるようなものを作るという方向性に。
ジャケットを第一弾として、suinnerチームでは、冠婚葬祭やパーティーなどのフォーマルシーンで着てもらえる服を作っていくことに決めたようです。
車椅子ユーザーと冠婚葬祭
フォーマルに絞るというコンセプトは、木村さんの「ピアカウンセラー」(同じしょうがい当事者からの相談を受けるカウンセラー)としての経験から生まれました。
車椅子ユーザーからの相談を受ける中で、「式の間、お世話できる人がいないから」「結婚相手の家族に悪いから」「喪服を持っていない」などという理由で、家族とのお別れの場や結婚式に参加させてもらえなかった、という声が複数寄せられたと言います。
一方で木村さん自身は結婚式に呼ばれることが何度もあり、受付やスピーチも担当したことがあるそう。その経験が自己肯定感にもつながったと振り返ります。
「車椅子ユーザーだからという理由で、大切な場に参加できないことがあるのだと衝撃を受けました。冠婚葬祭の時に車椅子でもパッと着れて、かっこいいフォーマル服があれば、参加するハードルが下がるのではないかと考えました」と木村さん。
ブランドロゴも完成!
木村さんのそんな思いから、服のタグなどにもつけることになる「suinner」のブランドロゴも完成しました。
「しょうがい者」と枠で括られていたところから「i(私/自分の意思)」が飛び出す…。そんなイメージでデザイナーさんが提案してくれたそう。フォーマル服のイメージでブラック一色のロゴになりました。
試作品を囲んでの打ち合わせでは「手首をもっとシュッと見せたいから袖をボタンで留められるようにするといいかも」「胸ポケットはつけたほうがいいかな?」「インナーとしてつけ襟やシャツの袖に見えるアームカバーを作りたい」「首の太さが人それぞれだから、試着会で確認したいね」など新しいアイデアや改善案も。
今後は車椅子ユーザーによる試着会を開催して、当事者たちの感想を元に、さらに素材や細かいデザインを試行錯誤していきます。名古屋や大阪の生地問屋に生地選びのための遠征に行こう!という案も。
同時に、ブランドを短い言葉で表す「ボディコピー」も検討します。例えば、スープ専門店のスープストックトーキョーであれば「世の中の体温を上げる。」。suinnerらしさを伝える言葉を試着会までにみんなで出し合うことになりました。
縫製をしてくれる方を探すことも急務です。ワタナベさんによると、ジャケットを丸々一着作ることができる人はなかなかいないのだとか。木村さんを中心にインターネットのサービスも使いながら探してみることに。
ロゴやデザインコンセプトなど、どんどんとブランドのイメージが固まってきました。試着会がさらに楽しみになってきましたね。やることも山積みですが、一つ一つプロのデザイナーのアドバイスを受けながら進んでいる様子が印象的でした。
また次回のレポートもお楽しみに。