発見と共感の輪が広がる!「インクルーシブデザインチャレンジ」第3回公開セミナー
2025年2月15日(土)神照まちづくりセンターにて、長浜市社会福祉協議会が主催する第3回「インクルーシブデザインチャレンジ!」の第3回公開セミナーが開催されました。
このイベントは、福祉分野とデザインの力を掛け合わせ、誰もが暮らしやすい社会を目指すプロジェクトの集大成です。1年間にわたり、多様なチームが地域の課題に取り組み、その成果を発表する場となりました。
新たな挑戦と成長の軌跡
2023年から活動を続けるグッジョブ×ジョブ、suinner、ノリノリ’sに加え、2024年からはミラプロ、わだちプロジェクト、平和堂が新たに参加し、プロジェクトの広がりがさらに加速しました。
発表に先立ち、ライラさんは「一見、マイナスな部分もプラスに変えるのが、インクルーシブデザインの醍醐味。今回の発表はゴールではなく、これから継続・成長するための出発点!どんな発表が聞けるのか楽しみにしています。」古戸さんは「福祉を広い視野で捉える発想に期待しています。」とメッセージを送り、会場の期待を高めました。

2年目チームの活動報告!
まずは、2023年発足の3チームの活動報告です。参加者は、発表を聞きながら感じた「!」や「?」を付箋に自由に記入。皆さん、うなずいたり「へぇ~。」と声を漏らしたりしながらメモを取る姿が見られました。こうした気付きの積み重ねが、新たな学びへとつながります。
グッジョブ×ジョブ

グッジョブ×ジョブは、働きづらさを抱える若者への就労体験プログラムを展開。これまでに20名の若者が60回以上の現場体験を行いました。
会場では、仕事を体験した若者たちのインタビュー動画が上映され、「自分の得意や苦手を見つけられた。」「居場所になった。」という言葉が印象的に響きました。笑顔で語る姿から、プロジェクトの成果がうかがえます。
ライラさんは「仕事を分析・分類し、悩む若者に導入できるプロセスを作るのも良いのでは。」と提案。また、古戸さんは「全ての若者の課題として捉え、包括的に取り組んでいることに感動しました。」と感想を述べました。
ノリノリ’s

子どもから高齢者まで、誰もが参加できるリズム体操を考案しているノリノリ’s。外国人高齢者サロンでの実践を通じて、音楽の力がコミュニケーションの架け橋となることを再認識したと話します。
さらに、新しく開発した平和堂のテーマソング「かけっことびっこ」の体操もお披露目。全員で体を動かし、会場全体が笑顔に包まれました。また、体験者からのフィードバックを反映し、高齢者向けのスローテンポ版も考案。今後は国スポ・障スポのイメージソング「シャイン」を用いた体操開発を目指します。
アドバイザーのお2人からは「多世代の発想を取り入れて地元の人に愛される体操に!」「音楽を聞くと自然に身体が動く…そんな体操を目指して、様々な場所で流してほしい。」と、さらなる展開に向けたアドバイスがありました。
suinner

着脱しやすいフォーマルウエアの開発をしているsuinner。今回は、完成したフォーマルウエアを発表しました。
前から着脱できる構造や、しわになりにくい素材など、細かな工夫を紹介。車椅子ユーザーや肩に痛みを抱える人々への負担を軽減するデザインが随所に光ります。会場からは「ほぉ~。」と感心の声が上がり、関心の高さがうかがえました。
プロジェクトの実践者で、自身も車いすユーザーの木村寛子さんは「着られる服がなく、冠婚葬祭の場に出ることを諦める車椅子ユーザーは少なくない。このジャケットがあれば、出席のハードルが下がるのでは。」とフォーマルウエアの開発に込めた思いを語ります。
現在は、結婚式場や葬儀場でのイメージ撮影も行い、販売に向けて準備を進めている段階。ライラさんからは、海外の伝統衣装との融合やジェンダーレスなデザインへの展開など、新たなアイデアが提示されました。
2024年発足!1年目チームの活動報告
1年目チームの活動報告では、各チームが独自の視点で福祉課題に取り組む様子が発表されました。
ミラプロ

滋賀県で唯一、介護福祉士資格が取得できる滋賀県立北星高校。教諭の高田静江先生が、生徒たちの活動や思いを発表しました。
福祉について幅広く学ぶ中で、生徒たちから「介護のプロとして、ウエディングドレスを着せてみたい!」と希望があり、ベッド上でのドレスの着脱・移乗練習を取り入れたとのこと。高齢者福祉の枠を超え、専門職としての意識を高める取り組みへと発展しました
さらに、福祉の魅力を伝えるために、福祉コース案内チラシやショート動画作成など、情報発信にも力を入れています。マイナスなイメージを持たれることもある福祉の世界ですが、生徒たちは、福祉を「感謝・感動・価値」のある仕事として捉えていると高田先生は話します。
福祉に30年以上携わっている古戸さんは「給料や休みのことを知らないまま現場に出ると、不安が大きくなり離職につながる。実際の現場で働く若者たちの声を拾うことは大切。」と実情を発信することの重要性を強調しました。
わだちプロジェクト

福祉についてポジティブに学ぶコンテンツ作りに取り組む「わだちプロジェクト」。これまでの活動を通し、普段関わりのない他者への理解が不足しがちである現状に気付いたと言います。「まるで、カーテンで隠されているように相手のことが見えていないと実感しました。」
こうした気付きから、相互の理解を深める体験型のアクティビティを企画。倒したピンの少なさを競う「スナイパーボーリング」、アイマスクを着けて進む「迷路」、指文字を使った「クラフト」など、楽しみながら多様な立場を体感できるプログラムを展開しています。
ライラさんは「マイノリティについて直接伝えようとしなくても、体験型のアクティビティを通して、参加者は自然と理解を深めることができるはず。」と、共感を生む仕組みの大切さを語りました。
平和堂

平和堂は、誰もが安心して買い物ができるお店を目指し、認知症の方を3名招き、その様子を観察する従業員研修を実施しました。当事者の方の「久しぶりに買い物ができて、楽しかった。」との感想を受け、お客様の「楽しい」を追求することの重要性に気が付いたとのこと。
アドバイザーのお2人からは「従業員が楽しければ、認知症の方を含めたお客さんも楽しく買い物ができる。堅苦しい研修にならないように。」「困り事を先回りして解決しないことも大切。」と、研修の柔軟性やお客様の主体性を尊重する姿勢についてアドバイスがありました。
体験で深まる理解と交流!

発表後には、各チームの活動を体験できる時間が設けられ、参加者たちの交流と意見交換が活発に行われました。
suinnerのジャケットは「軽くて柔らかい」「おしゃれで可愛い!」と着心地の良さとデザイン性の高さが高評価を得ました。
また、わだちプロジェクトのスナイパーボーリングは、1本だけ倒すのが意外に難しく「惜しい~もう1回やらせて!」と参加者が熱中するほど盛り上がりを見せました。
体験を通じて、参加者たちは各チームの活動への理解を深めるとともに、新たな課題や発見を得た様子。
実践者の方からは「福祉分野以外の力を借りることで、様々な視点を持ち、目標を実現することができた。今後の課題も見つかった。」、各チームのデザイナーからは「これまで福祉に関わる機会がなかったが、新たな視点に気付かされた。これからも取り組むべき課題が山ほどある。」と、今後に向けての意欲が語られました。
まとめ

「インクルーシブデザインチャレンジ!」第3回公開セミナーは、参加者それぞれの成長と可能性を強く感じさせる場となりました。交流や意見交換が積極的に行われたことで、新たな発見や疑問が生まれ、意外な共通点に気が付く場面も。お互いについて知ることで、プロジェクトのさらなる発展につながる手応えが感じられました。
そして「インクルーシブデザインチャレンジ!」は3年目の継続が決定!これからどのようなチームが生まれ、広がっていくのか。今後の展開がますます楽しみです!
セミナーの様子









