インクルーシブデザインの実践プロジェクトでは、福祉分野と多分野が協働するチームが、約1年をかけて実際に製品やサービスをつくりあげていきます。
今回は2024年から長浜北星高校の先生と生徒が主体となって始まった「ミラプロ」チームのレポートです。新年度となり、関わる生徒も変わった2025年のプロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか。
滋賀県でも指折りの観光地である黒壁スクエア界隈。
年間170万人近くが訪れ、にぎわっています。ただ、そこに訪れる人たちすべてが安心安全で満足できるのでしょうか……。
長浜北星高校のビジネス研究講座では授業の一環として、一帯の観光マップを制作することに。車椅子ユーザーや子ども連れ観光客に役に立つ地図にしたいと、まずは車椅子で生活する人や子育て経験者へののヒアリングを皮切りに現地でのフィールドワークを進めてきました。

地図に落とし込む
夏休み中も地図づくりに取り組む生徒たち。8月のある日の教室を訪ねました。
現地でのフィールドワークでは生徒が実際に車椅子に乗り、界隈を巡りながら、駐車場や公衆トイレ、スロープがあるところをチェック。これを踏まえ、実際にマップに何をどのように落とし込んでいくかを考えました。
生徒たちは「インスタ班」「おすすめルート班」「シール班」に別れており、班ごとのミッションを進めていきます。
インスタ班はSNSのインスタグラムの投稿で写真や動画を活用して、地図に乗せきれない情報を集約させていこうとしています。そこで何の情報をどのように載せるかを話し合い。
おすすめルート班は、界隈の観光スポットを効率よく回るルートの設定。
そしてシール班。明文舎印刷商事さんから糊面や台紙にも文字が印刷できる特殊なシールを提供していただけることになり、シールに入れる情報とマップへの活用の仕方を探ります。

車椅子からの目線とは
実は、授業の冒頭には長浜観光協会の前川和彦会長が長浜の観光全般についてレクチャー。
今長浜市が観光で力を入れていることや、インクルーシブな観光地をめざすために有償ボランティアや情報発信のあり方を模索しているということでした。なにより「人にやさしいまち」でありたいという言葉が印象に残りました。

そして授業のまとめとして班ごとに発表。
インスタ班は、駅から黒壁へのルート動画や車椅子で入りやすいご飯屋さんの紹介などを構想。おすすめルート班は史跡と、ぜひ味わってほしいお店などを織り込んだコースを設定。シール班は実際に訪れたスポットをマップ上でシールを貼り、スタンプラリー形式で楽しんでもらおうと考案、シールを剥がすと台紙にそのスポットの情報が知れるQRコードを印刷してはどうかという提案もありました。
最後、見守っていた支援者らの総評のなかで「健康な自分の身体で想定していないかな?」と投げかけたのが社会福祉協議会の山岡伸次さんでした。
「実際に車椅子で移動したらこれだけのコースにどれだけ時間がかかるのかという視点はあったでしょうか。車椅子の視点から見た黒壁をマップにぜひ取り入れてほしい」
この言葉に、生徒たちもハッとした表情。
車椅子ユーザーや子連れにこのマップは本当に便利な存在なのか──。改めて本来の目的を取り戻し、制作を進めていくことが期待されます。

