インクルーシブデザインの実践プロジェクトでは、福祉分野と多分野が協働する3つのチームが、約1年をかけて実際に製品やサービスをつくりあげていきます。
今回は「suinner」チームの最後の活動レポート。
チーム名
suinner (スイナー)
テーマ
インクルーシブデザインの視点でつくる商品開発
3チームが最終報告をした2024年1月27日の公開セミナーで、会場の参加者たちから投げられた質問や感想に対して、チームメンバーが思いを語りました。その内容をお伝えします。
座った姿を基準にした服づくり
1年間取り組んでみて、どうでしたか?
私自身これまでの活動でしょうがい者向けということにこだわっていたんだと思いました。
それを越えたインクルーシブな視点を目指さないといけないと感じました。
普段洋服を作る仕事をしているのですが、いつもは立った姿を基準にして作る。今回初めて座った姿を基準にして、着やすさや素材を考えて作ることになりました。
車椅子ユーザーの方が冠婚葬祭に着れる服がなくて参加できないと聞き、自分が当たり前にできていたことは、着るものによって変わってしまうんだと。それで自分ができることが見えてきた感じがします。
フォーマル服の要素を分解することで、いかにいろんな人が着られるものにするかを考える機会になりました。
マルチスイッチでの1人での活動に比べて、今回良かったことはありますか?
1人だとわからないまま生地を仕入れたり、作ったりしていた。仕入れや展開の仕方もアドバイスをもらって、大事なことを教えてもらえました。
それにこういった洋服作りではどうしてもコストが高くなってしまい、気軽に買えるものは作れず、1人だとそこで詰まってしまっていました。
今回ワタナベさんが『本当に欲しいと思う人に届けましょう。高いと思うのはやめましょう』と言ってくれて、すごく背中を押されました。
関わるからにはイケてる服を
デザイナーとして福祉の分野に関わってみて、どのように感じましたか?
福祉だから、ということは何も考えなかったです。
デザインをする際には必ずクライアントからの要件を聞くので、今回も同じように取り組みました。
私が関わるからにはイケてないと嫌、ダサいのは恥ずかしい、という気持ちはありました。
木村さんから洋服に関する困りごとのお話をたくさん聞く機会があったので、今まで洋服に携わってきたけど知らなかったことをたくさん聞くことができて、貴重な機会をいただきました。
青天井で欲しいものを言ってみよう
アドバイザーのライラ・カセムさん(一般社団法人シブヤフォント アートディレクター/国立奈良女子大学特任准教授)からはこんな感想もいただきました。
しょうがい者向けということを越えているなと感じました。このままおしゃれなレストランの制服にしても良さそう。
車椅子ユーザーとしての感想。
やっぱりこんな私でも、知らぬ間に世の中に対して遠慮というか、調整している。自分が欲しいものを全部言ってしまうと要求になってしまうから、と思って。
でも我慢するものでもないよなと思いました。欲しいものを青天井で出していくことで、デザイナーはいい着地点を見つけてくれる。
福祉の世界からやりたいこと、高い要求を出すことで『ぶっ飛んだことをしたい』と思っているデザイナーは喜ぶ。これは全国の当事者、福祉施設の人に言いたいな。
シンプルに「私も着てみたいな」と思える洋服ができあがり、デザインの力を感じるプロジェクトになりました。
2023年度のsuinnerチームの取り組みは終了です。今後も引き続き、試作品のブラッシュアップ、試着会を進め、製品化していくそうですよ。おしゃれな雑誌やデパートでsuinnerのフォーマル服を見かける日も近いかも。みなさんぜひ応援してください!