「福祉とデザイン研究会」による第3回の「インクルーシブデザインチャレンジ!」公開セミナーが1月27日(土)、長浜カイコーで開かれました。
今回はいよいよ最終発表。インクルーシブデザインの実践プロジェクトとして、福祉分野と他分野が協働して課題に挑む3つのチームが、1年を通して実践してきた活動の最終の報告とこれからの展開についてプレゼンしました。
最終発表にも、一般社団法人シブヤフォントのライラ・カセムさん、古戸勉さんのお二人にアドバイザーとして参加していただき、それぞれのチームに対して熱い感想・意見をたくさんもらいました。
聴講者も含めて20人以上が参加した公開セミナーの様子をレポートします。
視野もスケールも広がった3チームの取り組み
さっそく3チームの発表の様子をお届けします。
グッジョブ×ジョブ

主に発達しょうがいのある子どもたちに向けて、仕事や働くことについて知ってもらうきっかけになる動画づくりに取り組むグッジョブ×ジョブ。
関心を高める動画制作→知識を深める職場見学→経験をつむ職場体験という流れの中で、得意なこと・特性を自分自身で発見し、保護者や企業側も理解すること、それによってより良いマッチングに繋げることをめざします。
第一弾の動画になった「仕事」はお花屋さん。子どもたちからもらった「どんな仕事をしているかよくわかった」「お花の種類を知りたいです」「『やばいですか?』という質問は、何が『やばい』のかわからなかった」などの感想を元に、ブラッシュアップをしているそうです。
さらにグッジョブ×ジョブとして任意団体を設立したそう。市内の不登校や引きこもりの子を持つ親御さんの団体とも連携したことで、パワーアップしたようです。すでにフードバンクでの仕分け作業や唐辛子栽培の農作業体験を実施しています。
団体の最新情報などはインスタグラムをご覧ください!
☞ グッジョブ×ジョブ
ノリノリ’S


リズム体操を新たに制作し、DVDに収録、配布の活動を進めているノリノリ’S。
デザイナー・支援者として参加しているイケダ光音堂の池田洵一さんは「小学生よりも認知症などの高齢者の方が多いと聞いたことがきっかけでした。その方たちにも音楽で貢献できないだろうか、という思いが出発点でした」と話します。
長浜市社会福祉協議会の内貴紀香さん、振り付けなどを考えたインストラクターの中川亜紀さんによるアイドルユニット「ノリノリ’S」の体操指導の動画がお披露目。会場のみなさんも動画に合わせて体を動かしました。
さらにこの日は、実践の第二段階として、外国人や子どものつながりのツールとしてリズム体操を開発したいという構想も発表されました。「せっかくなら地元の企業ともコラボしたいと、動き出しています!」と池田さん。すでに滋賀県民なら誰もが知っている曲で体操をつくる企画も立ち上がっているとのこと。楽しみです。
suinner


車椅子ユーザーのためのフォーマルなジャケットを開発中のsuinner。
秋からデザインを考え、この日は「ギリギリ完成した」という試作品をお披露目。聴講されていた車椅子ユーザーの方に実際に着てもらい、公開試着会になりました。
シュッとしたジャケット姿に、「マルチスイッチ」代表の木村寛子さんは「とてもいい!男性も女性も着れる形になりました」。
エプロンのように後ろ側は完全に開く形ですが、うまくデザインされているため、後ろから見てもシャツを着ているように見えてかっこいいです。試着した車椅子ユーザーの方は「上から被らずに、腕を前に出せば着れるので楽です。ジャケットは普通疲れるけど、この服は突っ張る感じがない」と気に入ってくれた様子でした。介助者の方も介助がスムーズだったそう。
支援者の荒井恵梨子さんからは「装苑やPENなどのおしゃれな雑誌に載るようなブランドをめざします。まずは東京都内でポップアップショップを開いて売り出したいと思っています」と意気込みが語られました。
「長浜モデル」全国展開を
全国展開を発表を聞いたアドバイザーのお二人からは最後にこんな言葉をいただきました。
古戸勉さん(福祉作業所ふれんど施設長/一般社団法人シブヤフォント共同代表/社会福祉士)


「私は福祉の世界の人間。デザイナーなどの助けてくれるみなさんと、しょうがい当事者の出会いを妨げていないか?と真剣に考えました。リスクなどを挙げることで結果的に遠ざけていないだろうか?と」
「この福祉とデザインの取り組みは、福祉関係者があまり多くないということが、新しい取り組みになっているのではないでしょうか。でもその中で福祉現場の内貴さんがリズム体操を踊っていることに感動しました!」
「1年間でみなさんこんなに変わるんだと驚きました。これを長浜モデルとして、全国に展開していけそうですよね」
ライラ・カセムさん(一般社団法人シブヤフォント アートディレクター/国立奈良女子大学特任准教授)


「エモーショナルと経済性の両立をめざすことが重要。自分のやっていることを噛み砕いて、声に出していくことで、やりたいことがまとまっていきます。だからインクルーシブデザインには言葉、ビジョンが大事」
「関係ないものをくっつけていく、という癖をつけて欲しいです。くだらないことでも、考えてやっていくうちに、プロジェクトを展開させる大事なアイデアになる」
「楽しくやっていると、他の人も集まってきてコラボしたくなるもの。真面目になりすぎないでね!」
これからも世の中を良くするために
この福祉とデザインの企画を始めた、長浜市社会福祉協議会の山岡伸次さんからも熱い感想がありました。
数年前、「地域共生社会」のスローガンが国で掲げられ、長浜市でも福祉の困りごとをいろいろな人と話し合う会議がスタートしたそう。ですが、「難しいことが多く、どう福祉の世界に関わっていけばいいのかわからない」と回を重ねるうちに参加者も発言も減っていったと言います。悩んだ末に、あえて福祉のことを強調せず、「世の中を良くするデザインの勉強会をしませんか?」と呼びかけたところ、参加が増え、この「福祉とデザイン研究会」に繋がりました。
山岡さんは「今日、例えばsuinnerの作った服に、かっこいい!という感想をもらっているのを見て、すごく嬉しいです。こういうことをやりたかったんだと感動しています」「次年度も続けていきたいし、新チームにも参加してもらおうと思っています」と締めくくっていました。
2024年度も、デザインで世の中を良くする、福祉と他の分野をつなぐこのチャレンジングな取り組みがますます広がっていきますように!
2023年度の福祉とデザイン研究会の報告レポートも公開中です。それぞれのチームへのインタビューなどより詳細に研究会の活動を解説しています。
報告レポートはこちらからご覧いただけます。
第3回公開セミナーの様子









































