「福祉とデザイン研究会」による第2回目の「インクルーシブデザインチャレンジ!」が、2024年10月19日(土)神照まちづくりセンターで開かれました。
今回も一般社団法人シブヤフォントから古戸勉さんとライラ・カセムさんを講師としてお迎えしました。
セミナーでは6つの実践チームがプロジェクトの進捗を紹介し、アイデアをさらに発展させるためのワークショップを行いました。今後の新たな目標について参加者みんなでアイデアを出し合う有意義な3時間となりました。その様子をレポートします!
第2回目「インクルーシブデザインチャレンジ!」スタート!
まずは、講師のお2人からお言葉をいただきました。
「皆さん、全国に誇れる活動をしているなと感銘を受けています。どんどん動いているのを見て私も本当に楽しいです。今日も期待しています。」と古戸さん。
ライラさんからは「厳しくはありますが愛があるということを忘れないでくださいね!」とエールが送られ、いよいよ第2回目のインクルーシブデザインチャレンジがスタートしました!
各チームの活動報告
6チームによる活動報告では、第1回目のセミナーでの意見や気付きからどのように活動を続けてきたかを発表しました。
参加者は、発表を聞きながら感じた「!」と「?」を付箋に自由に書いていきます。後ほど、この付箋を使ったワークに取り組みますのでお楽しみに!
グッジョブ×ジョブ
若者に多様な仕事の選択肢を知ってもらい、当事者と企業が互いの魅力を発見する場を提供する「グッジョブ×ジョブ」。当初は、発達しょうがいのある子ども向けに活動を展開していましたが、「働かない選択をする若者」にも目を向け、現在は「働きづらさ」を感じている全ての若者をサポートしています。
活動の一環として、仕事を具体的にイメージ出来る動画を制作・発信。現在は中華料理屋の1日を追った動画を制作中です。
動画でイメージをつかんだ後、実際の仕事体験も提供し、今年は30回以上開催されました。代表の森さんは「お仕事体験を通して自分の得意だけでなく苦手も発見することで、将来の選択肢を広げるきっかけになれば。」と述べました。
これに対しライラさんは「夢を見つけるより、まずは気軽に始めてみることが大切。」古戸さんからは、「動画の中でリアルな部分も発信できると良いのかも。」とアドバイスがありました。活動は今後も進化を続けます。
ノリノリ’s
高齢者が健康的に地域で元気に暮らせるよう「楽しいリズム体操」を考案している「ノリノリ’s」。昨年は、リズム体操と口腔体操のDVDを制作し、長浜市内の高齢者施設に配布しました。
今年は活動の対象者を広げることが課題。そこで、滋賀県で広く親しまれている平和堂さんのテーマソング「かけっことびっこ」のリズム体操を開発中とのこと。
さまざまな場所でいろんな世代の方と「かけっことびっこ」のリズム体操を行いたい、と目標を掲げました。
ライラさんからは「どこで動画を流すかを考えていきましょう。図書館やスーパーマーケットの待合いエリアなど、いろんな場所に広げていけそう。」とアドバイス。古戸さんからは、「次々とアイデアを形にしてコンテンツ開発している。サロンのマンネリ化という話があるけれど、何百という足場があるのはすごいこと。これからが楽しみです。」とコメントが送られました。
suinner
「魅せたくなる粋な服」をキャッチコピーに掲げ、車椅子ユーザー向けの着脱しやすいフォーマルウェアを開発する「suinner」。昨年は、割烹着のように前から簡単に着られる服を提案し、さまざまなユーザーに試着をしていただきました。たくさんのフィードバックを経て、「冠婚葬祭で着られる着脱しやすい服」をコンセプトにした2着目の試作品が誕生。
車椅子ユーザーであり、ピアカウンセラーとしても活動してきた木村さんが、実際に着脱の様子を披露しました。わずか数秒でフォーマルな装いに変身する様子に会場からは驚きと共感の声が上がります。
木村さんからは、「地域の方の声を受け、誰もが冠婚葬祭に参加しやすい服を作りたいと思ったのが制作のきっかけです。」と語られました。
また、ライラさんからは「車椅子ユーザーだけでなく仕事で急いでいる方や子育てする方、おしゃれに自信がない方など、いろんなシチュエーションで役立ちそう。」と助言も寄せられました。
ミラプロ
滋賀県立長浜北星高校は、福祉分野に関心を持つ学生を増やすため「ミラプロ」を立ち上げました。
福祉に関わる人を招いて、仕事のリアルを学ぶ授業を実施したところ、学生の福祉に対する期待や関心が高まったとの結果に。学生からは、「ありがとうの言葉や、自分がいてよかったという意見に感動した」「福祉の知識がもっと広がってほしい」という意見が上がり、これからはショート動画やポスター、チラシなどを作成し福祉の魅力を多くの方に伝えていきたいと発表されました。
古戸さんからは「若者が自分の将来を主体的に考えられる良い取り組み。」ライラさんからは「10代の子たちと、何年も福祉に関わっている人とが互いに福祉を考え直す、循環プロジェクトだなと思いました。」と感想をいただきました。
わだちプロジェクト
福祉に関心のある世の中を作りたいという思いで、ポジティブに学び、体験できるイベントの開発に取り組む「わだちプロジェクト」。
前回のセミナー後に開催したスナイパーボーリングでは多くの家族連れが参加し、福祉への関心を高めるきっかけとなりました。「しょうがいを伝えようという思いが強すぎるとしんどいなと思う人も増えてくる。活動を通して考えが洗練されていくのが素晴らしい。」と古戸さん。
ライラさんからは、「言葉で説明しなくても、わだちプロジェクトのみんなと過ごしたこと、そのものが経験になる。では、その経験をいかに充実させるか、プロジェクトを通して思いを表現する方法を探してみては。」と今後に向けてアドバイスがありました。
平和堂チーム
「平和堂チーム」は、誰もがいつまでも頼れるお店を作ることを目標に、認知症サポーター研修や高齢者の疑似体験などを通して従業員教育に取り組んでいます。
しかし、受講したことを実践に活かせていないことが課題だと話します。「まずは、従業員が自分の仕事に自信を持ち、ワクワク感とやりがいをもって働くことによって、お客様によりよいサービスを還元できる。楽しく学べる社内研修をしていきたい。」と述べました。 実際に施設で働く古戸さんからは「せっかく教わったのに実践できない、モチベーションが上がらないというのは、施設職員の悩みと同じ。当事者意識をもつことで研修の効果が高まるかも。」とアドバイスがありました。
「仕事の誇りってどこにあるんだろうと掘り下げたり、ありがとうがどうすれば伝わるか探ったりするのも面白い。言葉の使い方ひとつで、相手の受け取る印象が変わる。」とライラさん。自身の体験を交えたお話が聞けました。
広がるアイデア!連想ゲームで発想を展開!
活動報告を聞きながら「!」「?」と感じたことを付箋に書き、チームごとの模造紙に貼る作業からワークショップがスタート!
各チームは付箋の中から気になるキーワードを1枚選び、連想ゲームを行います。1分ごとに次々と連想を重ね、15個のマスがあっという間に埋まりました。
続いて、ライラさんがインクルーシブデザインについて解説。「目標は出発点であり、ゴールではありません。世の中の利益を考え、客観性を持つことが重要です。」と話します。次のワーク「アイデアシート」では、連想シートで選んだワードをもとに新しいアイデアを発想。
各チームはじっくりと議論を交わしながら3つのアイデアをシートにまとめ、「なるほど~!」「おもしろいね」と新たな発見を共有しました。
未来新聞をつくろう
最後のワークショップは、「未来新聞作り」。3つに絞ったアイデアシートをヒントに、チームの未来の活動内容についてニュースを書いていきます。
「○年後にはこれを実現しよう!」という現実的なものから「こうなったらいいな~!」という大きな夢まで、楽しみながらアイデアを膨らませていきます。
グッジョブ×ジョブ
グッジョブ×ジョブは、「大阪キッザニアを模したグッジョブニアを京セラドームで開催!」という記事を書きました。その中には、若者が得意な技術をアピールできるオークションも開催。グッジョブ×ジョブの動画制作も若者が担うというビジョンを掲げました。
「若者の就職や仕事の意識が変容している現在、若者が頭を下げて企業に入れてもらうという文化に風穴を開ける取り組み。まさにインクルーシブデザインの取り組みだと感じる。」「地元の企業のスケールでやってみると面白いよね。若者が都心に流れていくのも抑えられるかもしれない。」と新たな視点から意見を聞くことができました。
ノリノリ’s
ノリノリ’sチームは、「ノリノリ’sのリズム体操が広がり、滋賀県からラジオ体操が消えた!」という楽しい見出し。子どもから高齢者、企業の朝の体操にまで広がり、市民のQOLが上昇したという内容です。
「ラジオ体操をなくす勢いでいいね!来年の国スポ・障スポにも組み込めないかな?!」という意見が上がりました。
suinner
suinnerチームは、「お母さんになったレディ・ガガさんが、suinnerのジャケットを着て授乳しながらグラミー賞の授賞式に登場した!」というインパクト抜群の記事を発表。さらに、赤ちゃんの時は布で発送され、成長に合わせてケープやジャケットに変形する服や、超撥水加工が施された雨具としても使えるジャケットの開発などのアイデアが並びました。
「しょうがいという言葉を使わずに、機能性の良さを広めているのが良い。いろんな人に使ってもらう想像が自然にできているから、本当に実現可能だと思います。」と古戸さん。
わだちプロジェクト
わだちプロジェクトチームは、しょうがいを含めた人の特性を知ってもらうカードゲームの開発をアイデアとして挙げました。
これには、「しょうがいに関心がある世の中にしたい!を、強く押しすぎると、人に伝わらない。」「しょうがいがあることに注目されたくないと思う人もいる。」という意見が。
スナイパーボーリングのように、遊びを通したコミュニケーションの方法をさらに追求する方法や、親子を対象に絞ったプロジェクトも面白いのではと提案がありました。
平和堂チーム
平和堂チームは、ホワイト企業ランキング1位を獲得したという記事を作りました。上下関係のない組織作りや、問題を人任せにしないという風土が、入社希望者に評価されているという見出しです。さらに、お客様を講師として招き、平和堂のより良い未来を作るための研修を行うというアイデアも発表しました。
講師のお2人からは「お客様を講師に招くという逆転の発想が面白い。」「従業員の充実度にフォーカスした取り組みは独特で素晴らしい。」とコメントがありました。
第2回目となった今回のセミナー。はじめはお互いに遠慮がちだった参加者も、ワークを通して積極的に意見を出し合い、最終的には「それいいね!」「こんなのはどう?」と自然と笑顔で交流していたのが印象的でした。次回、パワーアップした各チームに会えるのが楽しみです。
最終プレゼンテーションは2025年2月15日(土)に開催予定。プロジェクトの1年の成果報告とトークセッションを行います。
インクルーシブデザインに興味がある!どんな取り組みをしているのか聞いてみたい!と思った方は、第3回目の公開セミナーにぜひご参加くださいね。
記事執筆/ Ko-CoLab 撮影/Miwako Yamauchi