2026年2月21日(土)、さざなみタウンで「インクルーシブデザインチャレンジ!」第3回公開セミナーが開催されました。
今回も一般社団法人シブヤフォントのライラ・カセムさんと古戸 勉さんを講師として、お迎えしました。
今年度を締めくくる最後のセミナーは、各チームが1年間の進捗を発表。そして、アイデアをさらに発展させるためのワークショップを行います。


第3回目「インクルーシブデザインチャレンジ!」スタート!

ライラさんは「インクルーシブデザインとは、多様な立場の人が共創し、多くの人に響くアイデアを生むこと。相手の世界をどれだけ想像できるかが鍵です。」と、思考のヒントを提示。
続いて、福祉施設の所長も務める古戸さんは「シブヤフォントと関わるようになってから、利用者だけでなく職員も変わりました。何より、施設が外に開かれた場所へと変化していくのを実感しています」と、福祉が他分野と関わる意義を語りました。
お二人のエールとともに、第3回インクルーシブデザインチャレンジがいよいよ幕を開けました。
4つの実践チームによる活動報告
今回実践チームとして発表を行ったのは、「ミラプロ」「わだちプロジェクト」「平和堂」「Mazzel(まぜる)」の4チームです。それぞれの取り組みをご紹介します。
誰もが観光できるまちへ「黒壁きゃんせMAP(北星高校)」
総合ビジネスコースの生徒9名が、長浜市の「インクルーシブ観光マップ」を制作しました。車いすユーザーや子育て世代へのヒアリングを重ね、道の広さや多目的トイレの情報を集約。黒壁スクエアでの配布イベントやInstagramでの発信など、高校生ならではの視点で「誰もが楽しめる観光」を提案しています。
想像力を広げる体験を!「わだちプロジェクト」
「自分と相手の違い」を楽しく知るコンテンツ制作に取り組んでいます。電動車いすを用いた体験イベント「パワーチェア・アドベンチャー(PCA)」は、子どもたちに大好評。障害を「不便さ」として伝えるのではなく、ゲーム性を高めることで多くの人の関心を引きつける工夫を凝らしました。
誰もが安心して通えるお店づくり「平和堂」
認知症の方や子ども、外国にルーツのある方たちなど、誰もが直感的に売り場を理解できる店づくりを推進。イラスト入りのマップ制作に加え、地域の人たちと一緒に魚のモニュメントなどを作るプロジェクトを計画。愛着の持てる店舗空間を目指します。
人と人を混ぜ合わせ、つながる「Mazzel(まぜる)」
ひとり暮らしをする中村蓮さんが中心となり、友達づくりのためのカードゲーム「MAZEMAZE FRIENDS(マゼマゼフレンズ)」を開発しました。「くだらない話ができる関係」を築くための自己紹介ツールです。実際に遊んでみて「文字が小さい」といった課題も見つかり、今後さらに改善を進めていく予定です。
各チームの報告では、それぞれの視点で解決したい課題と向き合い、具体的な形にしてきた成果が発表されました。
参加者は、発表を聞きながら感じた「!」を青い付箋に、「?」を赤い付箋に記入していきます。うんうんと頷いたり、「へえ~」と声をもらしたりしながら聞き入る参加者の皆さん。集まったたくさんの付箋は、プロジェクトをさらに磨き上げる大切なヒントになります。
体験タイムで深まる理解
発表の後は、各チームの活動を実際に体験できる時間が設けられました。会場のあちこちで笑い声が上がります。
遊びやゲームが「対話」のきっかけに

わだちプロジェクトのブースでは、電動車いすの操作体験に挑戦する参加者が続出。
「思ったより難しい!」と苦戦する声が上がる中、足の指先で巧みに車椅子を操る美濃部さんに質問が飛びます。
「冬は足元が寒くないですか?」という問いに、「実は靴下を二枚履きにしています。」と答える美濃部さん。
また、「電動車いすを運転していて危ないと思った場面は?」という質問には、「傘を持っている人や歩きスマホをしている人にぶつかりそうになること、自転車が飛び出してくることも……。」などゲームを介することで、暮らしにつながる会話が自然に生まれていました。
Mazzel(まぜる)のカードゲーム「マゼマゼフレンズ」をプレイした方からは、「仲の良い友達同士でも、初めて会う人とでも、相手の意外な一面を発見できそう」との声がありました。

手に取って感じる工夫
黒壁きゃんせMAPのインクルーシブ観光マップを手に取った参加者からは、「明るい色合いでワクワクする」「シールが付いているのがいい」との感想が上がります。これなら子どもから大人まで、楽しみながら長浜の街巡りができそうだと期待感が広がりました。
実践チームの変化グラフ—成長は一直線じゃない

今回の発表では、各チームが活動中に感じた気持ちの変化を記入した「変化グラフ」も公開されました。
どのチームのグラフも、一直線の成長ではなく、上がったり下がったりと大きく波打っています。時には厳しい意見をもらって落ち込んだり、試行錯誤に悩んだり。しかし、粘り強くチャレンジを続け、どのチームも最終的には力強い右肩上がりのグラフを描いていたのが印象的でした。
「本当に形になるのだろうか……。」という不安を抱えながらスタートしたというチームも、少しずつ形になってくるにつれて「楽しくなってきた!」と話します。
発表を聞いたライラさんは、「つい『何をしなければならないか』という義務感に惑わされてしまいがちですが、大切なのは『自分は何をしたいか』に目を向け、それを言語化すること。」とアドバイス。
古戸さんも、「外の世界に出ることで、自分の立ち位置(できること)が見えてくる。実際に経験して初めて気付くことはたくさんある。」と、他分野と関わり、行動し続けることの価値を改めて強調されました。
分野を越えることで生まれた「個人の成長」
このプロジェクトは、関わった人たちにも大きな変化をもたらしました。
プロジェクトに参加したデザイナーからは、 「これまで接点のなかった福祉分野の方々と取り組むことで、本業の視点にも良い影響があった」という声や、ミラプロに参加した生徒からは「これまでは自分に自信が持てなかったけれど、この経験を通じて、これからは自分が本当にしたいことを実現させていきたいと思うようになった」という声がありました。
他分野と混ざり合うことで、自分自身の新しい可能性に気付く……取り組みを通して、そんな化学反応が起きていたようです!
良いものをつくるときには『衝突』が生まれる
プロジェクトの開始から現在まで、各チームのほぼ全てのプロジェクトに伴走してきた社会福祉協議会の山岡さんは、これまでの歩みを次のように振り返りました。
「福祉と他分野が出会うとき、より良いものをつくろうとすると必ず『衝突』が起こります。はじめは中間役として丸く収めようとしていましたが、今は『これは必要な衝突だ、やれやれ〜』と思うようになりました(笑)。葛藤し、落ち込むからこそ良いものが生まれる。来年度以降も、皆さんのチャレンジを応援し続けていきたいです。」
卒業チームからのことば
グッジョブ×ジョブ(若者の就労支援)
「初めは不安しかありませんでしたが、デザイナーさんと少しずつ形にできました。これからも新しい未来へ進んでいきたい。」と森さん。卒業を新たなスタートラインとして捉える力強い言葉を送りました。

ノリノリ’s(リズム体操)
「開始時は、まさか国スポのイメージソング『シャイン』で体操を作るなんて思ってもいなかった。声に出せば叶うことを実感した。」と語ります。

福祉と他分野が出会うことで、「できない」が「できる」に変わることを体現してくれた2チームとなりました。
3年間のインクルーシブデザインチャレンジを振り返って
アドバイザーのライラさんと古戸さんにも、3年間の歩みを振り返っていただきました。
ライラさん「最初は誰もが『課題』にとらわれ過ぎていたように思いますが、ようやく『インクルーシブな会』になってきたと感じます。『インクルーシブ=福祉』という固定観念から抜け出すには時間がかかります。だからこそ、他分野の人とぶつかり合う経験の積み重ねが、大切だったのだと改めて実感しました。」



「3年前の開始当初は『福祉』という言葉が会場に飛び交っていましたが、今日は良い意味で福祉課題っぽさがなく、純粋に楽しかったです。 外からの新しい視点を受け入れ、形が変わっていくことで、結果として福祉の現場にもより良い影響が巡っていく。この3年間、毎年進化を感じてきました。来年も楽しみです。」
2022年度から始まった「インクルーシブデザインチャレンジ!」。
5年目に向けて、福祉の枠を超えた各チームの挑戦はこれからも続いていきます!









